炭鉱夫は止まらない

世の中に眠った役立ちそうなものを探して綴る雑記

【感想】『この世界の片隅に』が戦争の悲惨さを描いた作品だと思い込んでいたが違った話

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【出典:この世界の片隅に公式HPより】

話題になっていた『この世界の片隅に』のDVD&BDがちょっと前に発売されたため、観てみました

太平洋戦争の時期を扱ったアニメ映画というと真っ先に思い浮かぶのが『火垂るの墓』
火垂るの墓は間違いなく名作と呼べる作品ですが、冒頭からあまりにも悲しすぎる展開のため僕は苦手だったりします

この世界の片隅にも太平洋戦争の末期(1944年頃)を扱った映画であり、舞台は広島
どう考えても嫌な結末しか思い浮かびません

が、いざ見てみると良い意味で期待を裏切る物語(※悲しい部分もあります)

子供に見せる戦争時代の映画としては火垂るの墓よりもこちらのほうがいいんじゃないかなぁとか思ったりしたのでご紹介を

ほのぼのとした描写が悲壮感を和らげる

予告動画を観た時から思っていましたが、戦争を題材にした映画とは思えない柔らかなタッチの絵が特徴の本作
戦争を題材にするとどうも戦争の恐ろしさ、辛さを前面に押しだしてくる印象があるのですが(※個人的感想)、この作品は日常はもちろん、空襲のシーンや原爆のシーンなども独特の表現を行うことで、悲壮感を和らげてくれます

こう書くとまるで戦争の恐ろしさを表現していないかのように思われてしまうかもしれませんが、そんなことはありません
貧しいながらも楽しく暮らしていた生活が、後半では戦争によってどんどん奪われていく様子が描かれています
その様子はやはり悲しまずにはいられないのですが、「どうだ、恐ろしいだろう」という恐怖を感じさせる表現とは全く違う、心に訴えかけてくる何かがあります

戦争は確かに絶対に起こしてはいけない
でも、それを伝える方法は何も恐ろしいシーンでトラウマを植え付けるようなものではなくてもいいのではないでしょうか

厳しい生活の中でも幸せに生きていくということ

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本作は作中のほとんどが、のほほんとした雰囲気の物語となっています
人によってはそれを『退屈』と思う人もいるかもしれません

しかし、戦時中だからこそ、いかにして何気ない日常を送るかというのは重要なことなのではないでしょうか

18歳で急に湧いて出たお見合いにより江波から呉へ嫁ぐことになった主人公のすず
いきなり知らない家に一人で行き、家事だなんだとこなさなかればならない境遇
当時では珍しくない光景なのかもしれませんが、それが大変ではないかと言えば違いますよね

ましてや戦争の末期
配給が減らされ、食材や調味料が少なくなっても、だから辛い、苦しい、ではなく、どうやったら少しでも満足いく食事になるか工夫しよう

そうしてどんな辛い状況でも強く生きていたんですね

そんな努力を続けながら生きているすずは、始終笑顔を絶やしません
それをただ能天気なだけと捉えるか、それとも色々飲みこんだ上で笑顔でいると捉えるかですずに対する評価も大きく変わってしまうかもしれませんね

のんの声への違和感はそのうち慣れる

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【出典:コミックナタリー『映画「この世界の片隅に」主人公すず役は、のん!声が聴ける予告も解禁』より】

主人公であるすずの声をやっているのは女優ののん(能年玲奈)です
はっきり言って全然上手くないですし、個人的にはアニメ作品に俳優を使うのは嫌いです

特に子供時代のすずには違和感しか感じません
『18歳のすずの物語』のように宣伝されている本作ですが、物語の始まりはもっと小さい子供時代から始まります
周りがいかにも子供な声の中、成人女性である“いかにものんの声”が入ってきます
これはすごい気になる…!

とは言え物語が進んでいきすずが大人になってくる頃にはその違和感にも慣れてきて、すずのおっとりしたキャラクターも相まって「すずの声はのん以外ないのではないか」という気持ちになってきます

片渕監督の言う「すずさんを本当にいる人のように描き出したい」という思惑は見事成功していると言っていいのではないでしょうか
本職の声優さんでは上手すぎて『創作のキャラクター』感が強まってしまったかもしれません

希望を感じさせる終わり

物語のエンドロールでは挿入歌が流れるためセリフが無く映像だけが流れます
そのため、この作品の終わりをどう読み取るかは視聴者次第だと思います

そんな終わり方ですが、僕はこの終わりから「ここからまた頑張って生きていこう」という強い希望を感じました

ネタバレになるため詳しくは書きませんが、太平洋戦争を通じて主人公であるすずには大きな不幸が訪れ、一時は荒れてしまいます
それでも最後に笑っていられるのは、決してすずがただの能天気な女性などではなく、全てを飲み込んだうえで前へ進もうとする非常に強い女性だからだと僕は感じました

終わりに

“戦争映画なのだから、戦争がいかに悲惨で残酷なものであるかを描かなければいけない”

そんな風に思っている人にはこの作品はとてもつまらないものに見えるかもしれません
僕はこの作品の特徴である、“戦時中での何気ない日常”というのがあまり描かれないものだったために非常に興味深いなと思いながら観ていました

この作品を観て涙する人、元気が出る人、その感想はどうも人によってまちまちなのが面白いです
子供が観るとどういった感想を抱くのか気になります

ぜひ『この世界の片隅に』を観て、あなたなりの感じ方を見つけてみてください